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 少年の頃、ロバート・ハリスは大好きだった外国文学の本を手に入れるために、何軒もの本屋を探し歩いた。
「欲しい本が全て揃っているブックショップがあったらいいのに。サロンみたいに、多くの作家や詩人が集まる“溜まり場”だったら、何て最高だろう」夢はブックショップをオープンすることだった。
 小さな頃に思い描いた、海の向こう側。本の中には異国の街や景色、繰り広げられる人間模様が描かれていた。日本とアメリカの文化が行き来するヨコハマで育ったロバート・ハリスは、ためらうことなく、自分の足で見に行くことにした。
 ただひたすら、多くの国を旅した。途中、微笑の島・バリ島で一年も過ごしてしまった。
「ここに一生いるわけにはいかない。旅を続けなければ」
 再開するには金が必要だった。英語圏なら何とかなるだろう、自分を押し出すように東南アジアを後にした。仕事をしてしばらくしたら旅に出ようと、砂漠がある大陸、都市がある国・オーストラリアに向かった。
 どうせ働くなら好きな本が並んでいる本屋がいいと、雇われの身、一店員として、働き始めた。サラリーマン達と一緒に、電車通 勤する毎日が続いた。朝、オフィスに着いて、本の在庫チェック、ランチに行って、また仕事。一日が過ぎ、一週間が終わる。週末、ディスコやバーで遊んでは訪れる、新たな一週間。 「いったい何をしているんだろう。トウキョウにいても変わらない生活だ。夢があったじゃないか」
 知らず知らずのうちに、都会に流されていた自分がいた。辞表を出して次の行動に移した。

 1978年、ロバート・ハリスは夢を実現させ、「エグザイルス・ブックショップ」をオープンした。多くの流れ者が集まるシドニーは、エグザイルス<放浪者>という名にピッタリの場所だった。
「本を並べるだけじゃなくて、コーヒーテーブルやソファを置いて、アーティストが作品を展示できる画廊を作った。売れていない作家から、売れている作家、詩人、ドラッグ・クイーン、アーティストまでアウトローな連中が集まる溜まり場になった。一番探しつづけていた仲間たちに出会えた場所だったよ」
 大好きな本が読めないぐらい、忙しい毎日が続いたが、充実していた。
 多くの仲間が集まっては討論した。 「詩の朗読会やディスカッションを開いた。人生論、精神論、とにかくいろんなことを話し合った。『エグザイルス・ブックショップ』には多くの思想があった」永久の終わりが訪れるまでの5年間がくれたものは、かけがいのない夢の断片になった。
「本屋ほど人間の歴史・文化をひとところに集めている所ってないと思う」子供の頃からこよなく愛した本は、多くの財産をもたらしてくれた。 思想の“溜まり場”、「エグザイルス・ブックショップ」。
ロバート・ハリスにとって、今でも夢の断片として心の中にある場所だ。



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