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 1996年、気まぐれな冒険心がロバート・ハリスを旅に誘った。
 「どこへ行こうか、と考えていた。まだ行っことのない国に行きたかった」
 昔、ヒッピー達の間で聖地とよばれる場所が世界中にあった。ギリシャ、マラケシュ、ゴア、ネパール、バリ。彼らはこれらの聖地を目指して旅をした。
 「僕はインドのゴアを目指して旅をしていた。アフリカに位置するモロッコ・マラケシュはルートから外れていたんだ」
 昔は、ヒッピーたちが集まり、レッド・ツェッペリンのコンサートが開催されるほど盛り上がっていた。
 だが、アラブ諸国を旅したことがある彼にとって、モロッコは身近で、影響も受けていた国だった。
 「好きな作家のポール・ボウルズが住んでいたし、よく観ていた映画、『カサブランカ』の舞台にもなっていた」
 モロッコは、フランス文化が浸透しているので、過激なイスラム国家ではないらしい。女性もベールを覆っていなくて、お酒も飲める。ほんの少しの情報を頼りに、まだ見ぬ国、モロッコに向かった。
 地図もガイドブックも持たない旅がはじまる。 最初に入った、カサブランカは工業都市で、白いはずの家は、全て灰色だった。
 「次に向かう場所を決めた。マラケシュにした。赤い家がたくさん並ぶ美しい街。『死者の広場』と呼ばれる広場には、一年365日、休むことなく、夜店が開かれる。大道芸人の蛇使い、水売り、アクロバットと、様々な見世物屋が、いろいろな街から集まって来る。活気があふれ、毎晩のように大勢の人々が集まった」
 かつて聖地とよばれていたマラケシュは、今も昔も、人が行き交っている。彼は、この地で新しい仲間に出会う。

「僕のガイドが元ヒッピーだったんだ。僕達は旅の冒険話で盛り上がって、すぐに仲良くなれた。彼はとにかく人望の熱いヤツ。いろんなところに案内してくれた。新市街で、バーに行き、仲間を紹介してくれた。彼らは、シドニーやバリのインターナショナルな遊び仲間達と、全く変わらない。ジャニス・ジョップリンなんかを聞いたり、唄ったり。初めて来た街なのに、なんだか『仲間が待っていた』ようで、すごくうれしかった」
 彼の旅には、必ず楽しいことが待っている。冒険心は、さらに先へと、彼を掻き立てる。
 「マラケシュからアトラス山脈を車で越えることにした。ガードレールがないがけっぷちを走り、スリルを感じながら見えた景色は、初めて見る別世界。山脈の下腹部はとっても熱いのに、上腹部は雪化粧なんだ。遠くから見ると美しいのに、よく見ると岩山の様な崩れかけの山があったり、考えられないことの連続だった」
 山から見えた景色のもっと向こうを、見に行きたくなった。 「山脈を超えて、エルフードという街をさらに抜けて、ドライブした。サハラのエッジに行き着いたよ。サハラの赤土の砂丘が、何百キロも続いていて、きれいだった。真っ赤に染まった朝日は美しかった」
 冒険心の赴くままに旅をしたモロッコ。モロッコの旅が見せてくれた、活気あふれるマラケシュの夜、ヒッピーだったガイドとの出会い。行き着いたサハラのエッジ。サハラの向こうには、何があるのだろう。まだ見ぬ世界への旅は続く。小さい頃、ヨコハマの港で見た海の向こうにある世界に冒険心を抱いた。彼は地図を持たず、まだ見ぬ世界を冒険するために旅へ出た。旅はたくさんの財産をくれた。ロバート・ハリスの『気紛れな冒険心』が目指す次の場所はどこなのだろうか。

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