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 1972年、バリに一年滞在後、ビザが切れたこともあり、仕事が見つかりそうな英語圏、オーストラリアへ向かう。
 シドニーでは、今まで訪れた国々とは異なる財産を見つけた。夢のブックショップ「EXILES」の経営、アングラ系の仲間達との出会いなど、深い思い出がある。
 「シドニーという街は大都市で、トウキョウのように一度住みはじめるとその街の一角が遊び場になるんだ。行きつけのバーやいろんなレストランがたくさんあった。仕事が終わった後にちょっと一杯やって、その後にディスコへ、なんてことが当たり前だった」
 やはり、都市での生活は、どこの国でも似ているのかもしれない。住んでいただけあって、ロバート・ハリスはシドニー市街のエリアに詳しい。それもそのはず、在住中に彼は30ヶ所も引越しをしているからだ。
 「いろいろ住んだエリアの中で気に入っている場所は東の郊外。シドニーの中心から15分くらい離れたところにあるダーリングハーストだね。ここは僕の『エグザイルス・ブックショップ』や住居があったところで、一番思い出が深い場所だ」
 街は6時頃になるとお店のほとんどが閉店する。その後は、繁華街へ繰り出す。
 「キングズクロスっていう夜の繁華街がいい。僕は東南アジアのような、人が行き交っている、忙しさのある喧騒が好きなんだ」
 シドニーという街での楽しみ方は、過ごし方にある。 「シドニーの良いところは街のスケールが小さいから、友達がすぐ集まれるところ。友達の家でパーティを開いては、お酒や食べ物を持ち込んで、カジュアルな集いをする。僕も、もちろん、自分の家に仲間を呼ぶ。日本では、パーティというと、かしこまったものと思われがち。だけど、シドニーでのパーティスタイルは、ただみんなで集まって、踊って、おしゃべりして、って感じだ。もちろんパーティの後に、クラブに行く。そんな集いをたくさんしていて、仲間は常に近くにいたから、本当に楽しかった」

 パーティが仲間を呼び、仲間が新しい仲間を呼ぶ。彼のカジュアルな話し方やフレンドリーな人間性から、連鎖的に仲間が増えていくのが目に浮かぶ。シドニーの人々が持つ気質にも仲間が増える要素があるのだろう。
 「シドニーの人々はすごく素朴なんだ。フレンドリーだけど積極的ではない。つきあい方のバランスをよくわきまえている。そんな連中が多いから、助けあうやさしさも良く知っている。だからといって、お人よしというとそうではない。反骨精神を持った人間ばかり。日本のようにガチガチの社会システムではなく、みんなツッパっているような反抗的な人間がいっぱいいるんだ。たとえば、政治家が少しでも威張ったり、正しくない態度をとったりすると、失脚してしまうこともある。個人主義ではなくて、連帯感を持ちながらも個々の考えはしっかりしているんだ」
 自分の考えを持つということは、簡単ではない。何よりも、たくさんの事柄に興味を持ち、理解しなくてはならない。シドニーでは、そういった考えは若者文化にも浸透している。
 「僕より30歳ぐらい若いようなヤツでも、意見があれば僕に対抗してくる。若者文化は活気があって、個性があって、自分を確立した若者が多かったよ」
 自分を確立することで、人間同士が「心の会話」をすることができる。
「自分をさらけだす」ことが生み出す関係性が、新たな仲間を創る。心と心を通わせて話せる仲間は、どんなに離れていてもその絆が浅くなることは決してない。
 「仲間のいない場所には行きたくない」。彼は自分自身をさみしがりやという。
 世界中にいる「心の通った仲間達」。
 ロバート・ハリスにとって、とてつもなく大きな財産である。

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